Fonderie PACCARDの鐘・カリヨン

ルーアンのノートルダム大聖堂の大鐘「ジャンヌ・ダルク」1959年製造、16トン。© archives Fonderie Paccard

ノエルには各地の教会が鐘を鳴らしてキリストの誕生を祝う。パリ・ノートルダム大聖堂ではカトリックの祭日など特別な日にしか鳴らされない大鐘(bourdon)がノエルには打ち鳴らされるという。フランス人はあまり教会に行かなくなったとはいえ、鐘の響きには特別な感慨があるのだろう。

9月にルーアンのノートルダム大聖堂のカリヨン (組み鐘)が修復・お披露目されたという記事を読み、教会の鐘やカリヨンを製造するパカール鋳造所の存在を知った。創業220年の同鋳造所はフィリップ・パカール現社長で7代目。その妻アンヌさんがアヌシー湖畔にあるアトリエを案内してくれた。この地方を治めていたサヴォワ公国は1792年に革命軍に占領され、すべての教会の鐘は接収されて武器に変わった。パカールの現住所から西5kmにあるカンタル村の市長だったアントワーヌ・パカールは教会の再建を決意し、鐘の鋳造職人を探して1796年に設立したのが同鋳造所だ。これまでに国内外の教会の約12万個の鐘を造り、とくにカリヨンでは世界一の実績を誇る。

教会の鐘は銅と錫の合金である青銅(ブロンズ)でできている。パカールでは鐘は銅78%と錫22%、カリヨンの場合は各76%、24%の割合だ。鋳型は鐘の内部を形作るコア(レンガと粘土)、鐘自体の形を成す 「偽鐘」(加工砂)、鐘の外側を形作るキャップ (細粒土と粘土)の3つから成り、これを加熱することで偽鐘に塗られた蝋に施された装飾や文字がキャップに移る。その後、偽鐘が取り除かれ、その空洞部分にガス炉で1000℃〜1230℃に熱した青銅が流し込まれる。型は原則一度しか使えないが、装飾や文字のない小型の鐘やカリヨンなど、製造する鐘の3分の2は偽鐘部分をアルミ型で代用する。マグマのような溶けた青銅を流し入れる作業(coulée)は圧巻らしいが、毎週木曜日のみということで残念ながら見られなかった。鐘製造のノウハウの要は、音色を決める外形と青銅の品質だそうだ。鐘が出来上がった後に、必要なら鐘の内側を少し削るなどして調音され、とくにカリヨンはそれぞれの鐘が音階を持っているため微妙な作業になる。調音者の耳が頼りだ。

カナダへの出荷を待つ鐘。

パカールはパリ・サクレクール寺院にあるフランス最大の鐘 「Savoyarde」(1891年/18.8トン)、シャンベリーのサヴォア公城礼拝堂の欧州一のカリヨン (93年/70鐘)、米ケンタッキー州の世界最大のスイングベル 「ワールド・ピース・ベル」(99年/33トン)などの大物から、より小さい教会の鐘、カリヨン、個人宅の鐘、鐘の音が出る彫刻なども手がけており (年産300〜500 個)、60〜80%は輸出。私が訪問した時も、カナダとドミニカへ送られる鐘が出荷を待っていた。青銅という言葉から緑がかった色を想像していたが、丁寧に研磨されたばかりの鐘は白銀色に輝いていた。7代に渡って直系男子が跡を継いできた無形文化財企業 (EPV)は 「男の子が5人いるから、8代目の跡継ぎも安心。世界規模の市場がわが社の強み」とアンヌさんは誇らしげだ。(し)

 

溶けた青銅を流し入れる作業(coulée)。この時、教会の鐘は司祭から祝別され、鐘が出来上がると命名式(baptême)も行われる。
Fonderie Paccard © Zeppelin