Noyonの高級レース

madeinjapan02レースにはいろいろな種類があるが、おおまかには 「編む」レースと、「織る」レースに大別される。レースは西欧ではフランドルやベネチアなどで16世紀頃に現われ、各地で独自の手法が生まれた。19世紀初めになると、織りレースの一種であるチュール地の織機がイギリスで発明され、機械チュールの生産が栄えた。そのチュール織機が1816年にカレーに密輸され、カレーと200km南東のコドリーにチュール生産が根付いた。その後、ジョン・リーヴァースがパンチカードを使ったジャカード機構を使ってチュール織機を改良し、さまざまなデザインを織り出すリーヴァース機を発明。それを用いてカレーで織られる高級レースが有名な 「カレーのレースDentelle de Calais®」だ。(現在は 「カレーとコドリーのレースDentelle de Calais-Caudry®」)

カレーの「リバーレース」(リーヴァース機で織られる高級レース)のトップ企業が1919年創業のノワイヨングループだ。パリでの仕事を辞めて1998年に家業を継いだオリヴィエ・ノワイヨン現社長の祖父リュシアンさんが創業。主にランジェリー向けのレースを生産していたが、1988年にプレタやオートクチュール向けのレースを製造するDarquer 社を買収し、現在はランジェリーが7割、モードが3割だが、「将来は半々にしたい」とオリヴィエさんは言う。「カレーのレース」の知名度のおかげで7割が輸出だ。

カレー市街地からやや南にはずれたところに本社・工場 (2万5千平米)がある。この地区はまさにカレーのレース産業の中心地で、1910年代には約600社、1000台の機械があったという。ノワイヨンのカレー工場にはリーヴァース機が60台と、編みレースのラシェル機が11台ある。後者は「編んだ」レースなので、伸縮性に優れている代わりに耐久性と繊細さでリバーレースに劣る。リーヴァース機は100年前のものを現在も使っており、自社でデジタル方式に改良したものもあるが、昔ながらのパンチカード仕様の機械もしっかり現役だ。幅6メートル、奥行き2.5m、12トンもする重厚な機械からデリケートなレースが織り出されるのは不思議な光景だ。

レース織りは準備が大変だ。リーヴァース機には平均1万5千本の異なる糸が使われる。細かい模様を織り出す糸は円盤状の極薄のボビンに手作業で巻き付けられ、機械1台に5千枚のボビンがキャリッジにはめ込まれて振り子のように左右に動くことでレースを織る。リーヴァース機は1時間に2mしか織れず、ラシェル機の6~8mと比べて3倍以上の手間がかかる上、微妙な調整を行う熟練者のノウハウがものをいう。

ノワイヨンの強みは製造ノウハウと品質のみならず、創業以来のアーカイブを持つこと。社内の資料室はさながら図書館で、レース見本を貼った台帳が無数に並ぶ。モードやランジェリーメーカーのデザイナーにとってはインスピレーションの宝庫だ。(し)

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