フランス野球の「助っ人外人」、山上直輝さん。

©FFBC/Glenn Gervot

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フランスでの野球のマイナーさにため息をつきながらも「野球界は今、盛り上がっているんです」と、山上直輝さん(33歳)。パリ南郊、サヴィニー・シュル・オルジュ市の「サヴィニー・ライオンズ」の投手兼ピッチング・コーチ。2シーズン目だ。フランスにはプロ野球チームはないが、社会人クラブチームがある。その上位8チームの1部リーグ戦が今、クライマックスを迎えている。

 山上さんはサヴィニーとプロ契約する「助っ人外人」。日本のピッチャーは投球のコントロール、変化球などの技術に定評がある。そして、阪神タイガースの「ムッシュ」こと吉田義男元監督が1989年から96年まで仏代表チームの監督を務め、今はその教え子たちが様々なチームの監督になっているということもあって、日本の野球を評価して日本人「助っ人」を求めるようになっている。サヴィニーの監督、ギヨームさんも「ムッシュ」教え子のひとりだ。

 京都出身の山上さんは、小・中・高・大学、社会人チーム、神戸でプロ入り、米独立リーグへ渡り野球を続けてきた。その後、契約によりフランスに来たが、団員は仕事で毎日は練習できない、ホームランがグラウンドに隣接する民家を直撃し、街で閉団運動が起きる、隣町のチームはグラウンドがなく体育館で練習、などのフランス野球の現実があった。

「投げている僕の後ろで『なんで、そうなるの?』ってプレーがいっぱい起きるわけです(笑)。最初はイライラするじゃないですか。でもやっていくうちに、プロじゃないし、勝たなくても皆が試合に出る方がいいんじゃないかと思うようになりました」。すぐには得られない結果を求めて焦るより、長いスパンで物ごとを考えるようにしたら、肩の力が抜けた。「フランスの社会と野球の〈ゆるさ〉のようなものが、そうさせてくれたのかもしれません」。団員と、指導者としてでなく、仲間として付き合えるのも居心地がいいと感じる。

 子ども団員約40人の指導も「いかに楽しんでくれるか」を優先に練習を考える。「僕、練習嫌いで、練習の時はボール飛んでくるな、とか、雨降れ、とか思ってました(笑)。でもこの子たちは思わない。まだ下手だけど、楽しいから」。仏代表チームに入った子もいる。かつて有色人種は入れなかったメジャーリーグに初めて入った黒人選手ジャッキー・ロビンソンを目指す子もいる。「この子たちがうまくなって、野球する人が増えたら嬉しい。続けてほしい」。来春、彼らを連れて日本に行き、日本球児と試合をさせる。野球との取り組み方の違いなど、何かを感じてくれたら、まずは成功だ。

 7月16日にラロッシェルで行われる仏リーグのオールスター戦の、栄誉あるメンバーに選ばれた。今、サヴィニー・ライオンズは1部リーグで最下位だけれど、8月末のシーズン終了まで、できる限りのことをやるつもりだ。(集)

今年は、妻とふたりでサヴィニーのチームから迎えられた山上さん。グラウンドから歩ける家に暮らし、2年目の契約が更新され、妻はサヴィニーのソフトボール・チームでプレーしている。

契約2年目の今年は、夫婦ふたりでサヴィニーのチームから迎えられた。来仏直前に結婚、グラウンドから歩ける家に暮らし、妻も、サヴィニーでやったことのなかったソフトボールに挑戦している。

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サヴィニーの子どもたちの練習風景。 みんなそれぞれ違う方向を向いているけど、いいのかな?

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練習中もリラックスして楽しそう。 グランドはのどかな住宅街のなか。民家と接していているため、子どもの試合は出来るが、大人はホームランを打ったら危険、との理由から、試合は禁止されている。