新しい「パリの心臓」、フォロム・デアール。


パトリック・ベルジェ主席建築家
マチュー・メルキュリアリ さんに聞く。

Mathieu Mercuriali – Architecte

©Aurélien Pasquier

©Aurélien Pasquier

今月5日、「パリの心臓」と銘打ってオープンした、パリの新しいランドマーク、レアール。このプロジェクトを2007年の建築コンペから牽引してきた、パトリック・ベルジェ建築事務所主席建築家、マチュー・メルキュリアリさんに話を聞いた。

 「鉄の骨組と18000枚のガラスを使った天蓋と建物全体が『カノペ (林冠)』です。ガラス板を木々の葉と見たて、森林が人びとを守るイメージです」。毎日75万人が利用するChâtelet-les-Halles駅 (地下4階)は、多くの人にとってパリの入口。そこに天蓋を設け、大きなホールを作った。どんな天候の日でも心地よい光が注ぐよう配慮した。
 「フォロム・デアールは70年代、高級ショッピングセンターとして計画されたものの、駅の巨大化により性質が変わり、想定外に老朽化が早く進みました。第一の欠点は、庭と商業施設と駅が孤立していたこと。今回のプロジェクトは、それらを繋いだことが強味です」。

 1977年、パリ南郊オルセーの生まれ(RERがレアールに乗り入れ、巨大なハブ・ステーションとなった年だ)。パリ・マラケ国立高等建築学校を卒業後、ローザンヌのスイス連邦工科大学で博士課程修了。パトリック・ベルジェ建築事務所で、14区のコシャン病院、ルイユ・マルメゾンの製薬会社オフィスビルなどを手がけてきた。

 建築を、地域や都市などの『大スケールで構想すること』を、研究と活動の軸とする彼は、パリ北部のマクドナルド倉庫地区の、全長600メートル、15の建築事務所が参画する広大な再開発についてアルスナル建築資料館で展覧会を企画。スケールの大きな「駅」にはこだわりがあり、モンパルナス駅やリヨン駅と日本の新宿や渋谷、名古屋など、商業施設とオフィス空間が層を成す大規模な駅を分析してきた。今は母校などの建築学校で講義をし、セーヌ川に浮かぶ産業遺産の島についての記事を、日本の軍艦島や直島などの再開発との比較を交えて執筆中。

 丹下健三氏を敬愛する一方、60年代の日本に興った菊竹清訓氏らの建築運動〈メタボリスム(新陳代謝)〉に共鳴するという彼は、今後もパリや他の都市を代謝させ、表情を変えさせていく立役者のひとりだろう。

 オープン後も「カノペ」に足を運ぶ。商店の人と話したり、来場者の反応を見ながら、この場が「生きている」ことを感じているという。大プロジェクトが一段落し、明日から旅に出る。3週間の日本の建築巡礼だそうだ。 (集)

Canopée_crédit Mathieu Mercuriali

建設中のカノペ全体図。©Mathieu Mercuriali

Canopée marquise

マルキーズとよばれる庇(ひさし)が、全体に設けられている。雨が降っても森林が守ってくれる感覚だ。