ラテンアメリカの勢いがある、第65回カンヌ映画祭報告。

『Sur la Route』

『Sur la Route』
 この記事が出る頃は授賞式後だろうが、本日はまだ映画祭折り返し地点なので中間報告でごめんなさい。悪天候に見舞われ、メイン会場の前では傘売りおじさんで溢れた今年のカンヌ。開幕はテキサス出身の鬼才ウェス・アンダーソンの『Moonrise Kingdom』でスタート。アンダーソンはハリウッドの大スターをオフビートな空気感に気持ちよく泳がせるのが得意で、本作もブルース・ウィリスらが登場する。そして今年のカンヌは本作に限らず、アメリカの大スターがインディペント系作品に妙に溶け込んでいる年でもあった。アンドリュー・ドミニクの『Killing Them Softly』には前作から引き続きブラッド・ピットが出演し、リー・ダニエルズの『The Paperboy』にはニコール・キッドマンやザック・エフロンがいる。レオス・カラックスの『Holy Motors』には歌姫カイリー・ミノーグがいて、出世株監督ジェフ・ニコルズの『Mud』にはマシュー・マコノヒーがいるといった具合。
 また今年はラテンアメリカの勢いがある。コンペには安定感のあるブラジル人ウォルター・サレスの『Sur la Route』と、何やら後半戦の台風の目になりそうな、太々しさが魅力のメキシコ人カルロス・レイガダスの『Post Tenebras Lux』が。ある視点部門にはアルゼンチンから『Elefante Blanco』、特別上映にはブラジルから『A Música Segundo Tom Jobim』が。ともに新ディクレターを迎えた監督週間と批評家週間でもこの傾向はさらに顕著。このラテンアメリカの隆盛は偶然ではなく、コロンビアを筆頭に、国をあげての文化政策が花開いた結果だという。
 一方ラテンの勢いに押され気味なのがアジア勢。コンペ内に日本人監督の名前がないのは寂しい限り。ただしキアロスタミの新作は日仏合作だし、ある視点部門には若松孝二、深夜上映では三池崇史がいたのは救いであった。(瑞)