女優がまぶしい。『5×2』、『Clean』

 女優がまぶしい。トニー・ガトリフ『Exils』のリュブナ・アザバルの弾ける躍動感も良かったが、フランソワ・オゾン『5×2』のヴァレリア・ブルーニ=テデスキ、オリヴィエ・アッサイヤス『Clean』のマギー・チャンの成熟した美しさが圧倒的だ。
 『5×2』は、名手オゾンの手によるカップル推考。一組の男女の出会い、結婚、出産、家庭生活、離婚を逆流してみせる。(吉)は独身なので、人は何故つがい(カップル)となるのか? というのが不思議でたまらないが、それは私的な問題なのでさておき、オゾンのカップル(ヴァレリア・B=Tとステファン・フェレス)は、双方に愛情を抱きながらも、一緒に人生を歩むことを途中放棄する。その、言葉では論理的に説明できない心理の綾を、みごとに顔や体の表情で表現するヴァレリア・B=Tが素晴らしい! いわゆる美人系ではないのだが女優として「今が盛り」という充実度が画面からこぼれ落ちる。シャルロット・ランプリングの復活もそうだったが、オゾンは女優を輝かせる魔術師だ。
 カイエ派、つまり大いなるシネフィル監督、オリヴィエ・アッサイヤスの今までの作品に本当の愛を見たことがなく、彼の作品には敬遠的立場を取って来た(吉)だが、『Clean』は、彼の元妻マギー・チャンへの愛以外の何ものでもないと思えた。ジャンキーなロック歌手の再生というシンプルな物語を、マギー・Cの演技と美しさで引っ張り抜く。彼女のための、彼女あっての作品だ。マギーもヴァレリアも今年40歳。フランス社会には成熟した女性を愛でる土壌があることをうれしく思う。表層的で幼稚なメロドラマ、セカチュー(『世界の中心で愛を叫ぶ』)にうつつをぬかす日本社会が成熟して、こういう映画を愛でられる日はいつ?(吉)

『Clean』

●Exils
 灰色の風景が広がるパリの高層アパートの窓に、裸でもたれるザノ(ロマン・デュリス)。手にはビールジョッキ。テクノのリズムが、沈殿していた思いを突き動したのか、ベッドで寝そべるナイマ(リュブナ・アザバル)に、アルジェリア行きを切り出す。汗とリズムと裸の感情がぶつかり合うロードムービーの幕開けだ。
 俳優二人が目指すのは、監督自身が思春期に身一つで飛び出して以来戻らなかったという故郷アルジェ。映画は、監督自身の過去の傷痕を見つめるルーツ探しの旅でもある。途中で出会う密航者たちやアルジェの地震の爪痕も、観客の心に深く刻まれるだろう。本年度カンヌ映画祭の監督賞受賞作。(瑞)