カトリック教会の中のユダヤ神秘思想カバラ。Anselm Kiefer

 今年の “Festival d’Automne a Paris” のポスターを担当したのはドイツ人アーティスト、アンセルム・キーファー。彼の作品展がサン・ルイ・ド・ラ・サルペトリエール教会で開催中だ。円天井の部屋には、このエキスポのために制作された高さ9メートルの5つの巨大なタブローが、また別の部屋には2つのインスタレーション作品が設置されている。
 この作品のテーマは、悪の力を解放させたエピソードとして、ユダヤ神秘思想カバラに語られている “Shebirat Kelim” (聖なる壷の破壊)。カトリック教会を「独裁国家」とみなし、ドグマを嫌うキーファーは、この極めてカトリック的な場で、もうひとつのスピリチュアルな声を聞かせると同時に、「教会は蝕まれている、崩壊するしかない」と訴えているのだろうか。
 彼の全作品に共通する、素材に対する繊細なアプローチには、いつもながら感銘を受ける。ケルンの聖堂の屋根を覆っていた鉛の板、砂、藁、乾燥ひまわり、服などが、浸食されたように暗濁色に存在している。また、『20年の孤独』というタイトルのインスタレーションは、本人によれば「20年かかった仕事」とのことだが、鉛でできた大きな本のいくつものかたまりの上に、精液の痕が残る大きな帳面が広げられている。絵画が持つすべての象徴的価値を、彼の作品には見い出すことができるのだ。
 キーファーはヴィジュアル・アーティストというよりも、むしろ「詩人」なのかもしれない。これまでに実に多くの本を出版してきたが、彼は、芸術は必ず何かを語らなくてはいけないと確信しているのだ。そんな彼の言葉を聞きに行ってみてはどうだろう。(ヤン/訳:仙) 
11/5日迄
*Chapelle de la Salpetriere:
47 bd de l’H冪ital 13e  入場無料 
『Tsimtsum』
Philip Guston Peintures, 1947-1979
 1913年モントリオールでロシア人移民の家庭に生まれ、その後アメリカに移住したフィリップ・ガストンの展覧会。
 初期の作品は、レジェ、キュビスム時代のピカソ、キリコなどの流れを汲む。大恐慌の30年代半ばにNYに住み始め、政府機関からの注文で制作した大きなフレスコ画には、メキシコ壁画の影響が見られる。ガストンは政治問題への関心が強く、人種差別グループKu Klux Klan (KKK) をフレスコ画の題材に選んだ。また、30年代末に出会ったベックマンの作品やピカソのゲルニカから、政治的主張は「芸術」に迎合せずに表現可能だと確信したのだという。
 1947年は彼の抽象的傾向が強くなる年である。その頃から50年代までポロック、ロスコ、ニューマンらと、アメリカ抽象表現主義と呼ばれるNY派の中心的存在として活躍し、作曲家フェルドマンやケージとの交流でアジア思想を知る。カリグラフィのような作品にはアジア的要素が見い出せる。しかし1958年には具象形体の意味の喪失に疑問を抱き、再び具象絵画を描き始めるようになるのだった。1970年、コミック風の作品がスキャンダルを巻き起こしている。
 都会を離れて田舎で暮らした晩年には、初期の素朴なモチーフが再び姿を表わし、独自のスタイルに到達。ナイーヴな形体が物語を語るようである。(蘭)
*ポンピドゥーセンター (火休) : 12/4日迄

●西美公二
独特な紙の素材感。小品から2mを越える大作まで23点。10/5~16日
La Fondation Avicenne :
27 bd Jourdain (Cite universitaire) 14e
●Shirin NESHAT
イスラム世界における女性の立場を問い続けている彼女の作品は、アヴィニョンのLa Beaut雌Wでも話題になった。NY在住、イラン人アーティストのビデオ作品。10/22迄
Forum des images: Forum des Halles
●<re (f) use>
使い捨ての時代は終焉。エコロジーなデザインを世界から集める。10/22迄 (月休)
Institut Neerlandais:121 rue de Lille 7e
●Irving PENN
50年代ヴォーグ誌で活躍、83歳の今日も現役のアーヴィング・ペン。モード写真やポートレートなど103点。11/5迄
Maison Europeenne de la Photographie:
5-7 rue de Fourcy 4e (月火休)
●<L’Incurable memoire des corps>
人々が持つ過去の記憶は消えることなく体に刻まれている。病院の敷地のなかで「不治の体の記憶」と題する大エキスポジション。Faust Cardinari, Unglee, G.Wambaugh など20人以上のアーティストが参加。11/5迄
Hopital Charles-Foix: 7 av. de la Republique 94200 Ivry/Seine M。Mairie d’Ivry
●<Changement de temps: Fabrice Hybert>
凱旋門を舞台に上部にはインターネットのサイト、周囲は木で取り囲むというHybertの巨大なインスタレーション。現代アーティストたちが歴史的建造物に「今」を絡み合わせる「時の移り変わり」展の一環。11/5迄 凱旋門
●荒木経惟
妻、陽子の死の前後を綴る「センチメンタルジャーニー」シリーズをはじめ最近作まで。性、生、死が共存するアラーキーの写真。11/27迄
Centre national de la photographie:
11 rue Berryer 8e (火休) 
●Gordon MATTA-CLARK
1978年に35歳で亡くなった彼は、60-70年代NYソーホーの最初のアーティストで、パフォーマンスアートのパイオニアだった。デッサンとパフォーマンスのフィルム16点。11月迄
Galerie Gabrielle Maubrie:
24 rue St-Croix-de-Bretonnerie 4e
●<Sous le ciel de la peinture-Paris>
17世紀から今日までの画家たちが描いたパリの風景。ダヴィッド、コロー、ドラクロワ、マティス、ピカソ、ジャコメッティら55人の150作品。12/17迄 (月休)
パリ市庁舎 Salle St-Jean: 5 rue Lobau 4e
●<Chefs-d’oeuvre de la Collection Rau>
スイス人医師の絵画コレクション。アンジェリコ、カラヴァッジョ、クラナッハ、フラゴナール、クールベ、マネ…。1/4迄
Musee du Luxembourg :
19 rue de Vaugirard 6e
●<Mediterranee: De Courbet a Matisse>
地中海地方の海、空、山を描いた19世紀から20世紀初頭の画家の作品を集める。 1/15迄 グランパレ(火休)
Albert Marquet