フランスが恐れるのはジハーディストの子どもたち

最近、メディアで話題になっているのは、イスラム国(IS)の「ジハーディストの子どもたち」だ。2011年以来、シリアに率先して行ったフランス人の男女(女性の大半は夫を追って)は推定2千人と言われている。フランスから子どもを連れて行った女性の他、大部分はジハーディストの次世代を生むためのセックス奴隷となる。数人の夫が次々に戦死したあと、3、4 人の幼児、なかには5人以上の子どもを連れて帰還してくる母親と、「時限爆弾」とも言われるISに洗脳された、これらの未成年者をどういうふうに迎え入れるか、いままでフランスが未経験の問題が浮かび上がっている。欧州•マグレブ数カ国から行った子どもやシリアで生まれた子どもは約11OO 人(最低50人は戦死)、仏国籍を持つ未成年者は約500人に のぼるとみられている。

子どもが行う斬首の場面は最高のプロパガンダ

10月4日、フランス5局が放映したドキュメンタリー映画(D.レピーヌ、S.ハーレイ監督)「ダーイッシュ(ジハーディスト)の子どもたち」は、現地で生まれた子どもや母親に少年時代にシリアに連れて行かれた子どもたちの証言を伝えている。男の子も女の子も2、3歳の時、まずクマのぬいぐるみと大きなナイフを渡され、勢いよく首を切れと言われ、斬首することが遊戯のようになっていく。5歳くらいの女の子もコーランの授業で暗記させられた「メクレアン(不信心者)は殺さなければならない」という文句を撮影中にもアラビア語で繰り返していた。12歳の少年は、人を殺す場面を毎日何回も見てきたので、「ぼくは何も怖くない」という。今年 7月、ISの拠点だったイラク北部の廃墟の町、モスルをイラク軍とクルド人部隊「ペシュメルガ」が攻撃し、IS軍を大敗させた。数カ月続いたシリア北部のラッカでの攻防戦も8月までにシリア民主軍(FDS)や連合軍の手に落ち、IS は後退、縮小する。

しかしISが自爆テロに使っているのは、7、8歳の少年、子ライオン(成人戦士を雄ライオンと呼ぶ)たちなのだ。恐ろしいことに児童の40%が自爆者になっているという。自爆死すれば天国に行けると信じて、少年たちは胴体に大きな爆弾を数個巻きつける。これこそ、西洋諸国を怖がらせ、ISの次世代を勇気づけるための最高のプロパガンダなのだ。「ビンラディンもアルカイダの目標は2千年後に向けられていると宣言していた」と、同ドキュメンタリー放映後の討論会でアメリカ人専門家が発言していた。

フランスはフランス人未成年者を国民として迎え入れる義務がある

仏政府はフランス人ジハーディストができるだけ現地で戦死してくれることを願っていたのだが、フランスに戻ってくる母子をどうやって受け入れるかが新たな問題となっている。トルコ警察は仏国籍でない母子を拘置しているが、仏国籍の子連れの母親は、ロワシー空港で例外なく子どもと引き離され、テロ諜報・調査部門から検察に送致される。ISに洗脳された未成年者は、内務省関係のカウンセラーや児童心理指導員が脱洗脳のための再教育を行い、児童保護施設か祖父母が健在なら彼らのもとに送られるのだが、ISに抹消された愛情、人間感情を復帰させるにはかなりの時間を要するとみられる。

*昨年ブリュッセルで発行された手記『Au coeur de Daesh avec mon fils(ISの中で息子と暮らす)』(ローラ・パゾーニ著)は 、4歳の息子を夫婦でシリアに連れて行き、9 カ月後に逃れて来たIS占領地での母子の地獄の生活を証言している。パゾーニさんは服役後、中学•高校生へのISについての説明会を開いている。