フィヨン右派大統領候補が「悪臭弾」をつかまされる。

シャルリ・エブド紙(17-2-1)「何もせずに50万ユーロ。ペネロープ・フィヨンの仮面」

サルコジ政権元首相フランソワ・フィヨンの夫人(61)ペネロープさん(愛称ペニー)は、自称「家庭の主婦」「ペイザンヌ(農婦)」でとおしてきた。英ウェールズ出身の良き妻、良き母親として5人の子供を育て、敬虔なカトリック信者として仏国籍を取得し夫を支えてきた。フィヨンは、30年来の政治家歴を持ち右派統一候補として、この5月に大統領選に当選するかもしれないのだ。

選挙運動たけなわの1月25日、風刺紙『カナール・アンシェネ』が「ペネロープが稼いだ60万ユーロが夫の選挙運動に毒をもる」と大見出しでスッパ抜き、フィヨンはすかさず「(彼を誹謗する)悪臭弾 boule puante !」と叫んだ。

なんでも1998 ~2002 年までサルト県選出の国民議会議員フィヨンは、議員に支給される5人分の公設秘書人件費9561ユーロ(税込)からペネロープに月3900€、4600€と払い続け、02年フィヨンが社会問題・労働相になったとき、フィヨンの代わりを務めたジュロー議員も、国会にほとんど顔を見せない彼女に最初は月6900ユーロ、06年には7900 ユーロに昇給した。ちなみに07年サルコジ政権の首相になったフィヨンの報酬は月21,300ユーロ(約175万円)。

その後、ペネロープさんは、フィヨンと仲のいいドラシャリエール氏所有の文学誌〈La Revue des deux mondes〉の書評担当として雇われ月5000ユーロの給与を受け、勤務20 カ月の間に匿名記事2本を書いたという。しかしスキャンダル色が増すのは、当時のクレピュ編集長曰く「編集室で一度も会ったことのない」ペネロープ夫人に合計10 万ユーロが支払われたという事実だ。フリーランスは記事1本につきだいたい500ユーロが相場。妻の「架空雇用」疑惑が明るみに出るや、フィヨン大統領選候補は「女性が働いてはいけないのか!」と、自称「家庭の主婦」でとおしてきたペネロープを働く女性に格上げする。

このスキャンダルが発覚した翌日、経済検察局が予備調査を開始した。ペネロープ夫人の「架空雇用」や「公金乱用」疑惑を一部のメディアは「ペネロープゲート」と名付けるがどこまで掘り下げられるか分らない。フィヨン夫婦の身からでたサビとはいえ、市長(サブレ・シュル・サルト市)・地域圏議会議長・上下院議員・大臣・首相と夫の出世街道にあやかってきた妻の思い上がりから思わぬボロが出た。だがボロはそれだけではない。1月31日付『カナール・アンシェネ』は、ペネロープが受けた架空雇用による給与は60万ユーロではなく総額90万ユーロだったと訂正し、フィヨンの2人の息子らにも父親の上院議員時代(05~07年)に秘書として8万4000ユーロの給与が出ていたと追加情報を流す。「清廉潔癖」と自認するフィヨンに予想だにしなかったスキャンダルが立ちはだかる。メディアはコワイ、一度かみついたら消化するまで離さないから。

議員の5人に1人は、自分の公設秘書として妻や恋人、娘や息子など親族を雇い、国会から人件費を受けているという。今までは慣例として「お互いさま」と誰もが目をつぶってきたのだが、この機会に親族の雇用禁止法案が議会で討議される日も遠くはないだろう。