セガン島のルノー工場跡地に、新たな音楽の拠点が誕生。

“La Seine Musicale” Ile Seguin, Boulogne-Billancourt

セーヴル橋から見下ろすラ・セーヌ・ミュージカル。

ブーローニュ・ビヤンクールの街を囲んで流れるセーヌに浮かぶセガン島は、11万5000㎡に及ぶ島全体がかつてルノーの自動車工場で占められていた。20世紀末にルノーが撤退したこの島の西北突端に、総面積36500m²という大規模な音楽総合施設“ラ・セミュージカル”が完成した。`

停泊する軍艦のようだったルノーの工場に代わって、低層の白い客船のような姿ががセーヌに浮かんでいる。屋上に載っかった大きなガラス球が特徴です。

ルノー橋を渡ると、入り口前の広場に出る。取材時はまだ無かったけれど、ここにはバーガー、自家醸造のビールの店などのテラスが出るという。黒いLEDの巨大スクリーンの横から、明るいホールに入る。

入り口ホールから建物の端までを結ぶ長さ280mの廊下が続いている。明るい廊下の左手に二つの音楽ホール、リハーサルや録音のための5つのスタジオなど音楽施設が並び、右手には流れを見下ろすバーやブティック、テラスなどの公共スペースがある。この廊下は建物全体の背骨のようなもので、ここからすべての施設にアクセスできる。二つの音楽ホールで演奏される異なる音楽を聴きに来た、好みも年代も異なるさまざまな人々が混ざり合い行き交うことを意識して造られた空間なのです。

設計者は メッスのポンピドゥ・センター分館や、紙の建築で世界各地の災害被災地支援を続けている坂茂(ばんしげる/ジャン・ド‥ガスティーヌ協力)。音響設備は永田音響設計(J・P・ラムルー協力)によるものです。

“ラ・グランド・セーヌ”は、2500の固定座席を備え、最大6200人まで収容できる、アンプを使う音楽のための大ホールで、バレーやミュージカルなどにも使われる。

建物に載った木組みとガラスパネルによる球の外側には、船の帆のように大きな太陽パネルが取り付けられ、この建物のランドマークになっている。800㎡もあるこのパネルは、太陽の位置に合わせて回転する仕掛け。

 

(左)楕円形の大ホール、グランド・セーヌ。(右)太陽パネルは高さ45m。

(左)オーディトリアム。(右上)オーディトリアムを包む壁。(右下)正面入口にあるLED大画面。

この球の真下に“オーディトリアム”がある。クラシック音楽のために最高の条件を備えたというこのホールは、ここの心臓部ともいえる場所で、全体が木製スラットで卵の殻のように包まれ遮音されている。この殻はさらに、角度によって色合いが変る緑色のモザクで覆われています。

円形のホールは、1150の客席が舞台を囲む形式で、可動式の席を取りはずせば、演奏スペースを拡大できる。

700m³もの木片で造られた凹凸のある壁と、蜂の巣のような木の細工で仕上げられた天井が最良の音響効果を生み、さらに座席のクッションは、人体と同じように音を吸収するから、空のホールでも満員のホールでも同じ音響が得られるそう。蜂の巣模様の天井には、坂さんお得意のチューブや紙管と紙で組まれたユニットが隠れていて、照明が組み込まれている。

セーヴル側の岸辺には、音楽家のための居住区があって、ここを本拠にするInsula Orchestra のメンバーが住んでいる。

オー・ド・セーヌ県合唱団 (パリ国立オペラ座少年少女合唱団)の練習も、ここでおこなわれるようになった。

正面の巨大スクリーン左の大階段を上ると、屋上庭園に出る。大ホールの屋根を覆う広さ7410㎡の小山のような庭から、対岸のムードンと、サン・クルーの緑を見渡すことがでます。(稲)

 


 

セガン島の歴史

ルノー時代のセガン島。

中世以来修道院の農園だった島に、1794年化学者アルマン・セガンが新しい皮革なめし法の実験所を開いた。これがセガン島の名の由来です。19世紀には、洗濯屋などの作業場と、釣りや舟遊びなどの行楽地にもなっていた。

1919年、ルノーが自動車工場従業員のための庭としてセガン島を買収。1929年セガン工場開設。1934年にベルトコンベア式の新工場が完成。1936年には、フロン・ポピュレール(人民戦線)の旗の下、労働者による歴史的な工場占拠が行われた。1940年にドイツ軍に接収され、1944操業再開、1955年からは日に2000台を生産していたが、やがて業績が悪化し、ついに1992年3月31日、操業停止となった。

その後1999年に、安藤忠雄の設計によるピノー財団の現代美術館建設が発表されたが後に白紙撤回。島は更地にされて、20世紀フランスの産業と労働運動の歴史遺産が消えてしまった。  

セガン島は今、ジャン・ヌーヴェルによる総合開発計画のもとで、野外彫刻公園、商業施設、映画館、ホテル、集合住宅などの建設が進められている。

 


 

INFORMATION

屋上庭園。ここまで上るのは、結構キツイ。

La Seine Musicale:
1 Cours de l’Île Seguin 92100 Boulogne-Billancourt

館内、屋上庭園はコンサートの有無にかかわらず一般開放(火~土11h-19h)
www.laseinemusicale.com/
[アクセス]右岸ブローニュ側からはPont Renault(車可)。
M° Pont de Sèvre(9番線)。左岸セーヴル、ムードン側からは歩道橋Passerelle Jean Nouvelで。
トラムの駅は Brimborion(T2)。


La Seine Musicale

Adresse : 1 Cours de l'Île Seguin, 92100 Boulogne-Billancourt , France
TEL : 01 74 34 53 54
アクセス : M° Pont de Sèvre(9番線), Brimborion(T2)
URL : www.laseinemusicale.com/